いわゆる「天皇の人間宣言」
(新日本建設に関する詔書)


神道指令をさらに徹底させるために、占領軍は昭和21(1946)年元旦に昭和天皇に迫って、いわゆる「人間宣言」を出させた。この「人間宣言」という言葉は、マスコミ・歴史家たちが勝手にネーミングしたものである。実際に天皇により発表されたのは「新日本建設に関する詔書」というもので、詔書では「人間宣言」なる語句は一切使われていない

これは前年の神道指令を出すときにすでに予定されていたもので、「神道指令」の大前提として、天皇自身に神格を否定させよう、「人間宣言」させよう、とGHQは考えたのだ。

ただし、この詔書を一読すれば明らかだが、昭和天皇の主眼は「五箇条の御誓文」をあらためて国民に示し、日本には独自の民主主義の伝統がある、ということを思い出させ、日本国民の生きる道を指し示すことだった。
祖父明治天皇が近代日本の国づくりの根本方針として定められていた御誓文を、これからの新日本建設のための拠り所として示すことによって国民の士気を鼓舞しようとするものだった。

五箇条の御誓文(明治元(1968)年)

GHQが「軍国主義」を一掃するという名目で、天皇みずからその神格性を否定する詔を天下に発布しようと考え、GHQが原案をつくり密かに日本側へ届けた。ところが、昭和天皇は原案をそのまま承認せず、「五箇条の御誓文」を冒頭に加えるよう指示した。マッカーサー自身も「五箇条の御誓文」は結構なものと賛成し、「新日本建設に関する詔書」が発表された。
昭和天皇はGHQの意図を正しく見抜き、その上をゆく考えをもっていたわけだ。

GHQが天皇に「人間宣言」なる意味不明の宣言をさせたわけは、GHQは天皇は西洋のゴッドと同じととんでもない誤解をしていたからである。
日本の神はゴッドとはまったく違う。日本の神は集団の一番上という意味である。
体の一番上は「髪(かみ)」、昔の大家族で下男下女がいるところでは、奥さんが「おかみさん」、太政大臣は「一の上(かみ)」で天皇は「御上(おかみ)」。だから神の由来は「おかみさん」と同じなのである。
これをゴッドと訳したのは明治時代のとんでもない誤訳だった。
仏教が入ったときに、仏を神とは言わなかった。キリスト教が16世紀に入ったときも「デウス様」と呼んで、神とは言わなかった。キリストを神と呼ぶようになったのは明治になってからである。明治のキリスト教徒は漢訳の聖書を使ったから「神」と訳してしまったのだ。

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参考文献 歴史年表