ラス・カサス報告書

白人のアメリカ到達以来の、先住民に対する白人の残虐無法ぶりを見て、たまりかねて非を内部告発した者がいた。コロンブスと同時代のスペイン人、ラス・カサスであった。
聖職者だったラス・カサスは、キューバ島で広大な拝領地(エンコミエンダという)の住人として、物質的利益の追求をしていたが、回心してスペインに戻ってきた。彼はインディオの虐待を見て、自国の植民地政策を痛烈に批判し、スペイン国王に報告書「インディアスの破壊についての簡潔な報告」を送ったのである。
その報告書でラス・カサスは、搾取と原住民の殺戮が日常化している植民地の実態を暴露した。

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1552年にこの報告が公表されると、教会、政治家、商人たちからラス・カサスに対して非難が集中した。彼らはラス・カサスを「恥知らずの修道士」「狂信的で邪心ある司教」などと指弾し、報告が暴露した大虐殺の事実を覆い隠そうとした。
スペインと対立関係にあったオランダ、イギリス、フランスではこの報告書は翻訳されて広く普及した。これらの国は、インディオに対する人道的立場からではなく、敵国であるスペインの非人道、残虐行為を宣伝するために利用しただけである。

日本でこの報告の翻訳が出たのはなんと昭和51(1976)年だった。長い間日本の西洋史学界が、ヨーロッパ人の歴史の暗黒面を暴くことにおびえていたのだ。

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参考文献 歴史年表