明治維新の世界史的意義

近代史上における明治維新の意義を一言でいえば、それまでの白色人種の独占物と思われた西洋近代文明を、有色人種も身につけることができることを示した点にある。
他のアジア諸国が西洋の列強に拒絶反応を示し、白人には絶対にかなわないと諦めたのに対し、日本は西洋文明を見てその知識や技術を学び自分のものとしてしまった。これが明治維新の世界史的意義である。

この時期、西洋の列強はアジア諸国を席巻し、長い歴史を有するインドや支那も西洋列強の力の前に屈せざるを得なかった。アジアの人々は西洋文明は「挑戦不可能」なものと考え、白人の支配に従うしかなかった。
例外が日本人だった。日本人は黒船を見て愕然としたが、絶望はしなかった。日本人は西洋についてはおおかた書物で読んで知っており、その文明を習得したいと願っていたのだ。日本は先物取引や、数学など、世界のトップレベルに達していた部分も多く、近代文明を受け入れる素地も充分だった。また、日本では指導者が西洋文明を正当に評価する知性と経験があった。
有色人種で初めて西洋の文明を自分のものにしようとして起きたのが明治維新である。そして、これが世界の「アパルトヘイト化」を防ぐ日本人の、長く激しい戦いの始まりだった。


世界史的視野から見た明治維新

西洋白人の世界で生まれ育った近代文明は、19世紀初頭から20世紀全般にわたって政治的・軍事的・経済的に威力を増大し、アジア・アフリカの広大な地域を植民地や半植民地支配のもとにおいて、ますますそのたくましい支配力と搾取能力を増進してきた。「帝国主義」の時代である。この帝国主義の時代において、日本もこの膨張する西洋列強の脅威に直面した。
しかし、日本はこの明治維新を出発点にして、独立主権国家として欧米列強から対等・平等に認知されることを目標にして奮闘努力を重ね、およそ半世紀にして自力で欧米的な国民国家を形成することに成功する。有色人種の国家で欧米帝国主義列強の仲間入りに成功したのは、大東亜戦争以前は唯一、大日本帝国だけである。これは世界市場に燦然と輝く歴史的事実である。
国家・国民を挙げて外圧の脅威に対応したのが明治維新にはじまる近代日本である。しかし、それより早くすでに江戸時代、二百数十年の天下泰平のなかにおいて政治・文化・経済・教育・社会の諸分野で西洋近代的な文明を十分に受容するさまざまな条件は整っていた。なかんずく国民国家形成や産業経済あるいは庶民文化発展の基礎条件は確実に成長していた。
外圧の脅威は国家の独立と安全確保への危機意識を高め、富国強兵政策への強い関心を生み出した。そして近代的国民軍隊の形成と産業の工業化で富国強兵を目指し、四民平等で身分制度を取り払い、国民に参政権を付与して立憲議会政治を推進したというのが近代日本の実相である。

戦後の歴史教育

あきれたことに、戦後の歴史教育では、上に述べた世界史的視野から明治維新を捉える観点がまったく欠けている。まず、1830年代以降、江戸封建体制の内部に階級矛盾が膨らみ、百姓一揆等々が増大し、幕藩体制が行き詰まる。たまたまその時期に外圧が到来し、支配階級の危機感はますます深まった。そこで封建支配階級の再編成が起こり、江戸幕藩封建体制から明治天皇制絶対主義体制に移行した、などという講座派史観を教えてきた。

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参考文献 歴史年表