グルー大使の「外交官生活で最も重大な電報」(1941年9月)

日米交渉が進まないのは日本の真意が十分に伝わらないためであると考えた近衛首相は、御前会議の開かれた9月6日、陸海外三相諒解の下にグルー駐日大使と会見し、現内閣は陸海軍一致して交渉成立を希望しており、この内閣をおいてほかに機会ありとも思えないと強調し、速やかに首脳会談を行う必要を申し述べた。
グルーは首脳会談に対する近衛の自信に動かされ、直接大統領宛てにこの会談内容を報告することを約束し「この報告は自分が外交官生活を始めて以来、もっとも重要な電報になるであろう」と感慨を込めて述べた
9月27日には豊田外相が野村駐米大使に首脳会談の急速実現を期すよう訓令した。随員もいつでも出発できる用意をし、海軍も新田丸を待機させて万全の純b意を整えたが、交渉は遅々として進捗しなかった。
このころ、グルー泰氏からはハルとルーズベルト宛てに彼の「外交官生活で最も重大な電報」が発信されていた。
その要旨は以下のとおり。
  1. 日本は真剣に日米首脳会談の実現に努力している。
  2. 対日経済圧迫より、建設的な融和政策の方がアメリカにとって賢明な選択であり、この機会を逸したなら戦争の公算は増加するであろう。
  3. アメリカが予備会談で、満足のゆく約束を日本側から期待するなら会談は遅々として進まず、日本側はアメリカは遷延を策していると結論し、近衛内閣は信用を失墜して瓦解し、軍部独裁内閣が現れるだろう。
  4. 日本はアメリカと正式交渉に入る意思のあることを示して、事実上、三国同盟を死文化する用意のあることを示している。
  5. 日本側の真摯さと誠意にアメリカが合理的な量の信頼を寄せるのでなければ、戦争回避の方向転換は日本に起こらぬであろう。英知と政治的手腕で日米関係改善と戦争回避は可能であり、それは今やるか、さもなければ永久にできないことなのである。
と述べて日本の誠意を信じて首脳会談を実現する必要を切言した。
だが、グルー大使の進言は無視された

  アメリカの反日政策(「東亜新秩序」〜日米開戦)

参考文献:大東亜戦争への道(中村 粲著)


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参考文献 歴史年表