バブル崩壊

平成2年(1990)3月27日に、大蔵省銀行局長である土田正顕(まさあき)が出した総量規制の通達から、一気にバブルがはじけた。
これにより土地を担保にして銀行から融資を受けていた企業や個人はどうなっただろうか。
たとえば、ある人が当時時価100億円の土地を持っていたとする。彼はその土地を担保に融資を頼み、60億円借りたとする(バブルがはじける前は大体そんな感じだった)。ところが、総量規制や新しい法律や税金など、一連のバブルつぶしが起こり、そのせいで担保に入れていた土地の時価が20億円にまで値下がりしてしまった。そのような現象が随所で見られた。銀行から融資を受けていた60億円はとても現金では返すことができないので、担保を持っていってくれと申し出る。銀行は土地を担保に融資をしたのだから返済できないときは土地を取り上げることになるが、担保に取った土地を売却してもたかだか20億円。融資額(60億円)から勘定すれば40億円も損する。

こうした事態が、現在の金融不況の一番の根幹なのである。
結局は、金融の本質がわからない監督官庁のエリートによって総量規制が行なわれ、さらに新しい税が導入されることにより、バブルが強制的に潰され、銀行が巨大な不良債権を抱えて動きが取れなくなってしまったということである。
官僚とその顔色を伺っているだけの日本の金融界が、価格というものに関して大きな過ちを犯した上に、そこに私有財産への憎悪・攻撃という要素が組み合わされて、日本の金融界は底なしの泥沼になってしまった。
それだけでなく、かつては債券発行まで許可して手厚く保護してきた大銀行を、持参金までつけて外国に引き取ってもらうようなことまで日本政府はやってしまった。
その他のたくさんの銀行もおたおたし、生命保険会社もずいぶん潰れ、外国に吸収されたりして、日本の富は見る見るうちに激減してしまった。
悪の総量規制通達は、1年9ヵ月後にやっと廃止されたが手遅れだった。しかし、バブルつぶしのために新しく作られた税のほとんどはいまだに廃止されていない。

これだけの大迷惑を国民すべてにかけておきながら、役人は誰一人責任を取っていない。不況の張本人・土田正顕(まさあき)は死ぬまで東京証券取引所の社長をやっていたというからあきれる。
唯一責任を取らされたのは「ノーパンしゃぶしゃぶ」に通った連中だった。大蔵省で誰一人としてバブルつぶしの責任を取らないのはまずいということになって、「ノーパンしゃぶしゃぶ」に行った人たちが狙い撃ちにされた。
大蔵省で裁かれるべきは、本当は、バブルつぶしの政策を立て、実行に移した奴らである。そいつらが「ノーパンしゃぶしゃぶ」組を罰っし、国民の目を「ノーパンしゃぶしゃぶ」組に向けさせることによって国民感情をなだめすかし、自分たちの責任をうやむやにさせた。本当に悪い奴らは、ほとぼりが冷めたことに、外郭団体の特殊法人に天下った。

パールハーバーの奇襲攻撃ミッドウェー海戦ガダルカナル戦同様、日本の官僚の無責任は今に至るまでまったく変わっていない。

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